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菖蒲前(あやめのまえ)伝説を訪ねてあやめのまえでんせつをたずねて
東広島市各地に残る 悲劇の美女の伝承(ゆかりのスポット紹介)

菖蒲前(あやめのまえ・菖蒲御前、菖蒲の前とも表記)は平安時代に活躍した源頼政の側室で、東広島市内に多くの伝説が残されています。
物語は今から850年も昔、京の都から始まります。時の帝を悩ます怪物・鵺(ぬえ)を源頼政が家臣の猪早太と共に退治。その手柄により、美貌で知られていた菖蒲前と結ばれました。
その後、台頭してきた平家打倒を目的に1180(治承4)年、頼政は以仁王(もちひとおう)を奉じて挙兵しましたが、事前に発覚。宇治川の戦いに敗れ平等院で自害しました。身重の菖蒲前は3歳の若君・種若丸を連れ、家臣の猪早太(いのはやた)らをお供に西国のこの地に逃れてきました。

【吾妻子(あずまこ)の滝】西条町御薗宇
下原村千尋(ちひろ)の滝まで来たとき、幼い種若丸は旅の疲れで亡くなってしまわれました。菖蒲前は「吾妻子や千尋の滝のあればこそ広き野原に末を見るらん」と手向けの歌を詠まれ、近くに埋葬されました。後に、この滝は「吾妻子の滝」と呼ばれ、滝の上に観音堂が建てられました。

【徳行寺(寿福寺)】西条町御薗宇
種若丸を失った後、菖蒲前は寿福寺の庵に身を寄せて豊丸(ゆたかまる)を出産。都から落ち延びてきて、わびしい生活の中にも若君の成長を楽しむ月日が流れました。その後、寿福寺は徳行寺と名を改め場所も移転。豊丸は、成人して水戸新四郎頼興(みとしんろうよりおき)と名乗りました。

【観現寺】西条町御薗宇
菖蒲前は豊丸を出産後、庵をたて、頼政の守本尊を納めて菩提を弔いました。これが観現寺(かんげんじ)で、家臣の猪早太も近くの勝屋に住んで勝屋右京(しょうやうきよう)と名乗り、この寺を守りました。観現寺の護摩堂には頼政、西妙尼の像が安置されており、境内には猪早太(勝屋右京)の墓と伝わる宝篋印塔(ほうきょういんとう/市史跡)があります。

【二神山城跡】西条町下見
時は移って源氏の世に変わり、菖蒲前は頼政の恩賞として賀茂郡一円を賜りました。領主となった菖蒲前は、二神山(ふたがみやま)に城を築きました。

【福成寺】西条町下三永
二神山に城を構える領主となった菖蒲前は、菩提寺として福成寺(ふくじょうじ)を再建し、深く信仰しました。自身で彫られた西妙尼像や、手植えの夫婦杉(吾妻子滝から見える)、鏡や水差しなどが残されています。

【姫が池】八本松町原
しかし平穏な生活も束の間、ある時、源氏の軍勢に攻められて二神山城は落城。菖蒲前は白馬にまたがり、侍女の鶴姫とともに逃亡しました。池の畔で敵に追いつかれそうになったとき、鶴姫は菖蒲前の着物を羽織って、身代わりに池に飛び込んで時間を稼ぎました。その死を哀れんだ里人たちが、その池を「姫が池」と呼ぶようになったと言われます。

【馬頭観音】八本松町飯田(疱瘡神社内)
現在の八本松駅近くまで落ち延びた菖蒲前が水が迫の滝の辺りで休憩していると、敵が押し寄せてきました。これまでかと馬に向かい「私の愛馬よ、私は敵に追い立てられ死を覚悟している。しかし、敵どもの手にかかって死ぬのは口惜しい。汝(なんじ)の腹に隠れ、生き延びることが出来れば、汝を馬頭観音(ばとうかんのん)として祀ってやろう」といえば、馬も頭を垂れ、足を折り、涙をはらはらと流し、早く早くとせきたてました。
涙ながらに馬の命を絶ち、腹を割いて身を隠したことで一命を取り留めた菖蒲前は、後に観音を建立して愛馬の霊を慰めました。その観音は「馬頭観音」と呼ばれ、死を止めたことから「死止観音」、街道から一目チラッと見えることから「一目観音」とも呼ばれました。現在は八本松駅の北にある「疱瘡(ほうそう)神社」の境内に祀られています。

【小倉(おぐら)神社】八本松町原
生き延びた菖蒲前は八本松の大山の南側の山中を最期の場所と定め、庵を建立。京の小倉山に似ていたことから「小倉山」と名付け、髪を下ろして名を「西妙」と改め、亡くなった人や愛馬を弔う日々を過ごしました。死期を予感した菖蒲前は「定めなき世をうき事に見限りて菩提の道に入るぞ嬉(うれ)しき」と詠み、父母の形見の青葉の笛を持って土の祠(ほこら)に入りました。聞こえていた笛の音と読経の声が7日後に途絶え、入定(にゅうじょう)されました。後に里人が菖蒲前を祭り、建立したのが小倉神社です。神社には従者の墓に守られた菖蒲前の墓といわれる宝篋印塔が立ち、命日と伝わる8月27日に祭礼が行われています。

【円福寺】 
菖蒲前の死後、旅の僧がこの地を訪れ、菖蒲前を祀って小倉寺を建立しました。その後、山の下に降りて、円福寺と改称されています。

この他、氏神社、鏡見寺、明顕寺、妙見神社、若宮社、小倉神社遙拝所など、多くの関連史跡が残されています。


●写真
「吾妻子の滝」
「福成寺(本堂内厨子及び須弥壇)※提供:東広島市教育委員会」
※「吾妻子の滝」「福成寺」はサイト内の観光情報で詳細を紹介しています

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  • 歴史・文化・史跡

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住所 東広島市八本松
電話番号 082-420-0977(東広島市 文化課)

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